2008年1月16日水曜日

白っぽい話

よく、用を足しながら、考えにふけます。


トイレの話をすると不潔だの、
敬遠される話題の一つになっているかもしれませんが、
なかなか、そこにはその国の文明、
国によれば宗教的側面さえ現れるものです。

ちなみに自分の家のトイレはいわゆる
「ぼっとん便所」ですが、最近は貴重になりつつあります。

とにかく日本に関しては、町は今や無臭に近い清潔な国です。
匂いのあるものはとにかく消しているといった感じです。

以前に「ソケリッサ」の振付の中で、
日本のイメージの色をおじさんに聞いたことがあります。
そのおじさんからは、「赤か・・・・白か・・・・白の方だな。」
というような答えが返ってきました。

おそらくおじさんの中では、
国旗の「日の丸」のイメージが強いような気はしましたが、
日本は白っぽい清潔なイメージは確かにあります。

他の国に関しては、寒色、くすみ、原色、
国の現状も含んだそれぞれの色のイメージが浮かびます。


人に関しても同じ事は言えると思います。


山本周五郎氏の小説「季節のない街」を読んだ時、
シンプルな人間の色を感じました。
いわゆる2枚目は一切出てきません。弱かったり、
アル中だったり、病気であったり、他、
世間で言う歪みのある人間が登場します。

それはとてつもなく人間的でした。

小説を映画にした「どですかでん」では登場人物の住む家に、
視覚においても見事に色の表現がありました。
黒澤監督は小説を読み、人間の色を
表現しようとした形態だと思います。

登場のホームレスの父子の会話では、
父親は家についてとことん子に語ります。
「・・・住んでいる人によっては、
その家が性格を備えているようにみえる場合さえ少なくない」と

まさにその通りに感じます。
家は住むものの人間性をあらわすもので、
マイホームを建てたり、家を購入する行為は、
自己の確立ではないでしょうか。

しかしながら、色のわからない家が多く建っています。
これは外見的なことではなく、住む人間の色が
薄れているということです。

自分は社会が白くなること(清潔化)に対して、
そこだけを責めるつもりはありませんが、行き過ぎて、
後戻りの出来ない事になる恐ろしさは
誰もが感じていると思っています。



「ソケリッサ」のおじさん達は、
皆家に住みたいと言います。
他のホームレスのおじさんのなかには、
このままでいいという人もいました。
色々です。

「ソケリッサ」は、社会の片隅にいる見向きもされていない
ホームレスのおじさんが、注目される舞台の上に立つと
面白いのではないか、という部分からの発想です。

人間誰もが自身を認められようと日々生活を送っているなかで、
路上生活者が舞台に立つということは何が見えるか、という観点です。

収益は次回公演にあてるため、
出演はおじさん達それぞれの意思です。
全員揃った日は、練習の日ではまだ無く、
今の所チラシ撮影日のみでした。

出演者は技術上は素人である上、
それぞれはがっちりと絆があるわけでもなく、
生活もあり、現状はそれぞれ危うい糸の上を渡っています。

昨年1月の第一回公演は、なんとか形になりましたが、
2回目だからといって、侮れない状況です。

しかし人数が減ろうが、本番は来ます。
その時の色を観てもらおうと思っています。



ここでいったん昨年の話に戻ります。

大学の授業の一環として開催されたパフォーマンス
「カフカ」は、おかげさまで満席状態で提供できました。

自分は高卒という事もあり、大学という場所は初めてでした。


それにしても学生は皆、とにかく忙しそうでした。
「課題」や「単位」が学生達の言葉の中に頻繁に登場します。

普段自分がホームレスのおじさん達と接している事もあり、
何かと比べてしまいますが、状況はすべてが対極といっても
過言ではない気がします。


校舎の掲示板を見ると非常にエネルギー余りある状態で、
学生達による催し事やパフォーマンスの掲示はもちろん、
頻繁な著名人(芸術家)の特別講義のお知らせが目に付きました。
かなり頻繁に特別講義は開催されているようです。

情報や刺激が溢れている場所でした。
刺激の連続に麻痺をする事無く、
とにかく実になるものを感じて欲しいに尽きます。

もちろん自分も何かと麻痺することはあります。
強靭ではありません。

現代での当たり前のように満たされた
クリーンな生活での表現や生産は
、シンプルな力強い生命の営みを送るものには
かなわない部分が出て来てしまうような気がします。

人間が作り出したものにはその関わった人間が投影されており、
人の心にもっとも響くのは、泥だらけそれをでつくり出した
人間の部分だと思っています。


実は「ソケリッサ」を一番必要としているのは
自分なのかもしれません。







今回はこの辺で・・

※宮崎による代理投稿。執筆はアオキ裕キ

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