2009年5月21日木曜日

踊ります

5月24日(日曜日)三鷹ギャラリーオーク 
山本萌さんの画展にて踊ります。
素敵な画展です。

踊り15時~。入場無料。
「ソケリッサ」メンバー4人と出演予定。

1年ぶりにおじさん達と踊ります。
20分ほどですが、是非お立ち寄り下さい。

2009年5月19日火曜日

トーキョー18才、春

我が布団ににもぐり込み懐に身を寄せて寝ていた猫のハナが、
布団の外に出て寝るようになった。

すっかり春である。

目覚ましの音も、暖かいと聞こえ方もやわらかく変わる。
布団の外の出るのが億劫にならないのも良い。
日が伸びるせいか、時間もゆっくり流れるように思える。


その日は中央線の高円寺で打ち合わせがあり、昼には終了、
春の日差しの中のんびり駅へ向かう。

春に吉祥寺の井の頭公園で、ソケリッサのおじさん達と踊ろうと
思っていたので、そのままひとり下見に向かうことにした。

車内より外を見ると、阿佐ヶ谷の町が見えてきた。
そこは兵庫県から上京して、最初に住んだ町であり、
流れる目前の景色の中、高校卒業間もない時分を簡単に思い出す・・



学校もアルバイトも何も決めないまま、
自分は高校卒業3日後に東京に来た。
何とかなると思っていた無計画な東京生活の始まり方は
なんだか気に入っている。

東京にいる親戚が見つけてくれたアパ-トは、
駅沿いの落ち着いた商店街を歩いて10分程。
大家さんの家の門をくぐり、庭をこそこそと進むと、
敷地内にそのアパートがあった。
木造二階建て、1階に3部屋、
2階は大家さんの息子夫婦がすんでいる。
部屋の間取りは6畳一間、トイレ共同、
風呂なしで4万8千円、一人暮らしが始めての事、
高いのか安いのかもよく理解していなかった。

自分の部屋は入り口を入り一番手前、
隣もその隣も大学生のようである。
隣に挨拶に行くと、きれいな身なりの中背のお兄さんが、
ぼそぼそと「あ・・よろしく。」と声が帰ってきた。

まさに東京の言葉、東京のしゃべり方に思えた。

大家さんの老夫婦はとても優しく、
東京生活に身構えている自分は、
その笑顔のおかげで幾分か肩の力を抜くことが出来た。
そのうち学生時代の友達が東京に遊びに来ることもあった。
友達と騒いでも大家さんはやさしかった。
注意されないのをいいことに騒いでいた記憶がある。

友達が来ると、新宿や、渋谷、原宿の街を案内する。
最先端の街を自慢し、人の多さや、ファッション、
田舎と比べ、友達が驚く事に優越感があった。

ビルが隙間無くきっちり立ち並び、
都会の濃い灰色の景色は、
いわゆる皆の持つ冷たいイメージの要因であり、
当時の自分にとっては、そのクールな景色すべてに
染まろうとしていたような気もする。

自分にとっては、それが東京人になり、
注目されるための条件であったのだろう。


近所に行きつけのラーメン屋があり、
そこでは安くて大盛りのチャーハンをよく食べた。
300円そこそこで、大盛りでも400円くらいだった気がする。
8人も座ると満員の店はかなり年季が入り、
机も床も油で汚れている。真面目そうなやせたおじさんが、
いつも一人で働いていた。

そのおじさんには制服姿の金髪の高校生(に見える)の息子がいて、
彼は学校から帰ってくると、店の入り口をせわしなく開けて
店内を通過し、そのまま奥の住居らしき階段を上がって行く。
おじさんが「お帰り」と言うのだが、彼はいつも無言だった。
忙しくても手伝わず、やがてすぐに外出していた。
その出て行く後姿をおじさんはちらりと目で追いかける。

何度か目にするその情景の中、自分はただチャーハンを食べる。


又、商店街には古本屋があり、たまにふらりとのぞく。
ガラガラと引き戸をあけるとそこは、古書特有の香りが充満している。
店の奥に静かに座る初老の店主の放つ空気は、
店内にならぶ古書を読破し、世界を達観したように見えてしまう。
当時の自分はその店主を”うならせる”本を選ぶことができず、
ただ買いたい本が無いそぶりで店を出ていた。


アルバイトは焼鳥屋の皿洗い、70才近いおばあちゃんと二人で、
皿を洗っていた。おばあちゃんはとても良くしてくれて、
昔話や、テレビ番組の話を良くしてくれて、
おやつで買った団子をいつも半分くれた。

ある日、無駄に水を出したまま、違う作業に取り掛かり、
「もったいない!」とおばあちゃんに注意をされた事があった。

悪いのは自分と判りながらも、その日は自分から
おばあちゃんと口を利かなかった。

次の日「ごめんね。」と謝ってきたのはおばあちゃんだった。


・・・ふと思い出した18才時の自分である。


実は2年ほど前、阿佐ヶ谷に用事があり、
街を歩いたことがある。アパートも、古本屋も
中華料理店も、おばあちゃんのいたバイト先も
既にどれも無かった。


井の頭公園はたくさんの花見客で埋まっていた。
花見は経験無いが、とにかく楽しそうである。
公園の管理事務局に顔を出し、職員のおじいさんに
「勝手におどっていい。」と言われる。

「すみません、ありがとうございます。」と返した。

ソケリッサ!メンバーのおじさん達と
そこで踊っているイメージを膨らます。

桜が満開の中、なかなか変な踊りだった。


どうやらおじいさんやおばあさんに縁がある・・
と思いながらであった。



今回はこの辺で。